2012年04月19日

ΕΥΡΗΚΑ ~ ヘウレーカ ~


私はそうやって、貝割れ達と向き合って来たのだ。



だが、これからは。


尊い生命が無駄に失われる事は無くなるだろう。

ツブツブもすぐに流れて、指が痛くなる事も無いから安心。

水道代も嵩まなくて、ラッキー☆



その驚きの方法はね、

まず、貝割れの束をパックから取り出し、必要な分量だけスポンジからちぎり取ります。

スポンジが付いたまま、葉から根へ向かって水を流します。

茎を掻き分けながら水を通し、ツブツブを洗い流します。

根っこがスポンジにくっ付いているので、貝割れは落ちないのダ☆


ツブツブがあらかた無くなったら、根っこを切り落としまーす。

切り口の周辺を軽く洗って、お・し・ま・い♪




ね?

簡単でしょ?


じゃ、ワタシ、これからお買い物に行ってきまーす♪

そう。もちろん貝割れ大根買っちゃうYO!
ブロッコリースプラウトも忘れずにNE!!

そしたら、洗った後 切らずにドレッシングかけて、ガブッとかぶりついちゃうかもね☆

ワイルドだろ〜ぅ?



じゃ、読んでくれてありがとーう

何か思いついたらまた書くつもりでーす☆
あるきめでーす☆





とある主婦の手記より  


前のお話へ / 終

 



ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ




posted by 霧野 あみ at 16:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ΕΥΡΗΚΑ ~ ヘウレーカ ~ 

ΕΥΡΗΚΑ ~ ヘウレーカ ~

それほど画期的な発見だった。

少なくとも、私にとっては。



そう。私はついに、発見した。


貝割れ大根の 効率的な洗い方を。




ここまで読んで来て 舌打ちをした方、
ちょっと待って欲しい。

戻るボタンを押すのは、もう少しだけ待っていただけないだろうか。


苛立つ気持ちもよくわかる。

壮大な大風呂敷を解いてみたら、中身はショボイ貝割れ大根。特売品50円。

そりゃ、腹も立つだろう。


だが、考えてみて欲しい。


今まで、どれほど多くの若い命が 無駄になって来たことか。


貝割れ大根の束の隙間に絡み付く、あの黒くて丸いツブツブ。

躍起になって奴らを洗い流しているつもりが、

いつの間にか指の隙間から流れ落ち 暗い水の底へ吸い込まれていった、たくさんの貝割れ達。


慌てて救出を試みるも、青々と誇らし気に広げていたその双葉は既に排水口の中。

一瞬のうちに、「食材」から「ゴミ」という立場へ変貌してしまうのだ。

排水口に入ってしまったら最後、もう上の世界には戻れない。

そこには歴然と、越えられない壁が立ちはだかっているのだ。



青々と輝く双葉。
白く透き通るような、ほっそりとした茎。

その華奢な姿は、弱く儚気でありながら 健気にも生命の喜びと強さを漲らせている。


だが、ゴミなのだ。彼らは既に、ゴミなのだ。

それ以上に育つ事も無く、かといって誰かの滋養になるわけでもなく、明日の朝には回収され燃やされてしまう運命なのだ。



私は涙する。

左手に、貝割れの束を握りしめたまま。

そして、心を決する。

「済まない。貝割れ その1。お前の死を無駄にはしない。残った仲間達は、必ず助けるから」



私は涙を拭く。

手がビショ濡れなので、肘の方にまで水滴が伝う。


さらに慎重に、私はツブツブを洗い落とす。

左手はさっきより固く握りしめているため、非常に洗い辛い。


冷たい流水で冷やされた指先は、ズキズキとして真っ赤だ。

だが、諦める事は出来ない。

サラダの中にあのツブツブが入っていたら、気持ち悪いからだ。


掻き分けても掻き分けても、絡み付いて離れないツブツブ。

知らず知らず、眉間が険しくなる。



だが、そこでふと気づくのだ。

このツブツブは、種の殻だ・・・
このツブツブのおかげで、貝割れ大根はここまで立派に育ったのだ・・・・




私はまた涙する。

邪魔者扱いしてしまって、ごめんなさい。

ツブツブよ、今までありがとう。
ツブツブよ、さようなら。



ようやく水を止め、かじかんだ手で残ったツブツブをつまみ出す。

冷えすぎて感覚を失った指先は、思い通りに動いてはくれない。

根気よくツブツブを取り除け、ようやく貝割れ達をサラダボウルに移す・・・・





私はそうやって、長い間 貝割れ達と向き合って来たのだ。




ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 霧野 あみ at 16:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ΕΥΡΗΚΑ ~ ヘウレーカ ~ 

新連載 始めました。


随分とご無沙汰の更新になってしまいました。

その間も、毎日(ほんの数人ですが)見に来て下さる方がいらして、PCの前で喜びに身を捩っておりました。

傍目には不気味な姿でしょうが、どうかお許しいただきたく思います。



さて。

現在、別のお話を書き溜めている最中なのですが、また新たに書きたいお話が浮かんでしまいまして。


ちょっと浮気して、新しいお話の方を先に公開しちゃいます。

100%しょーもないお話です。
そして、短いです。


サクッと読み飛ばして、鼻で嗤っちゃって下さい。





ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 霧野 あみ at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ

ΕΥΡΗΚΑ ~ ヘウレーカ ~


苦節、17年。


私はついに、発見した。





17年もの長きにわたり・・・


私は 触れれば切れるような冷たい水に耐え忍び、

奈落の底に落ちてゆく若い命を 涙ながらに見送り、

執拗に絡み付いてくるゴミのような奴らに苛立ち、

だがしかしゴミ共も元々は彼らの仲間であった、という事実に苛まれてきた。



が、それも今日で終わりだ。



ひらめきは、突然訪れた。

それは、啓示と言っても良かった。


単純且つ至極美しい その解決法を思いついた時、

思わず『ΕΥΡΗΚΑ!!』と叫んで裸で駆け出したい、という衝動を 見事に抑えた自分を、私は讃えたい。



それほど画期的な発見だった。

少なくとも、私にとっては。




      / 次のお話へ


ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ

面倒なのは承知している。
ですが、どうかひとつ!!押していただけるとありがたい!!!


posted by 霧野 あみ at 15:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ΕΥΡΗΚΑ ~ ヘウレーカ ~ 

2012年03月09日

あとがき的なもの。

いやいやいや、どうもどうも。

なんとか終わらせましたんでね・・・


少し間は開きましたが。

イッチョマエに、あとがきっていうか、言い訳?感想?
……よくわかりませんが、なんか独り言をね、書かせていただきます。

ええ、完全に自己満足です。

まぁそもそも、このヘボ小説自体が自己満足なんですがね。



読み返すと、泣けてきます。

文章が下手すぎて。


頭の中の映像を文章にするのって、つくづく難しいですねえ・・・・




さて。

ワタクシが前に書いた、別の駄小説もお読み下さった奇特な方はお気づきかと思いますが。
(そう。別のお話も書いているのです。全く、性懲りもなく…)

今回のお話と、うっっすら繋がって・・・・いるような、いないような。


文章がアレでわかりづらいかもしれませんが、時系列で言うと グエン一家が来日する 少し前の時期のお話なのです。

あえて、季節とかに全く触れていないのでね、超能力並の読解力で読み取っていただきたいのですが。


読み手の読解力に頼るという、新しい手法。斬新! (←オイ



おそらく彼女は、グエン一家の来日準備を手伝う中で、彼らの人となりや思想、修行内容などに触れたのでしょう。
なので、緑川ゆりの作る物語には、若干 彼らの影響が滲み出ています。

そして、彼女(ゆり≠有希子)の妄想癖炸裂は、この頃すでに確立されていたのですね〜。



なんてね。

さも得意気に書いてますが。(いや、別に得意がってはいないんですが)


そんな設定、あらかじめ決めていたわけではなく。

あらすじこそ決まってましたが、書きながら設定その他 色々思いついて、ねじ込んでいったんですけどね。
そもそも、店員を”ゆり”にしたことすら、途中からの思いつきですし。


とんだ泥縄。あはは。性格出ちゃった。
でも、”有希子”じゃなくて、あえての”ゆり”。←これは、わざとです。



とにかく、そんなカンジでニヤニヤしながら
「ああ、アンタも色々あったのね〜」だの「なんていうの?これって、”外伝”風じゃなあい?」なんて思いつつ、書いてました。



え?

「緻密な構成」?



なにそれ。初めて聞いたコトバ。

たぶん、私の人生には一度も登場しない単語。


何にせよ、これで「サレンダー」関係のお話は終わりです。たぶん。






文末になりましたが。


最後までお付き合い下さった(数少ない)方々には、心より感謝致します。

特に、ランキングクリックまでして下さった方には、ホント、大・大・大感謝です。

来世でなら嫁になってもいい。もしくは婿。


もう少ししたら、次のお話が始まりますんで。

どうぞそちらも、よろしくお付き合いのほどお願い致します。。。




ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 霧野 あみ at 16:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 水曜のリリーベル

2012年03月05日

ー 水曜のリリーベル ー

「ろくじゅうご、ろくじゅうろく、ろくじゅうしち・・・・」


完全に日課として定着した、腹筋と腕立て伏せ。

今やそれぞれ50回どころか、100回ずつを2セットやるまでになっていた。


男は今日も、祈りながら腹筋をしている。

幸せを祈りたい相手の、笑顔を思い出しながら。


以前には、別れた元妻の笑顔を思い出せなくて落ち込んだこともあった。



だが、あの喫茶店でのささやかなお別れパーティーで・・・


酒もすすみ 若干酔いの回った勢いで
「別れた奥さんの笑顔が思い出せない」と漏らしてしまった男に、マスターは言ってくれた。


自分も同じだった。
妻を亡くしてしばらくは、彼女の辛い様子や苦しげな顔しか思い出せなかった。
だが、時が経てば、ちゃんと思い出せるようになる、と。




「もしかして、自分を責めてませんか?罪悪感に閉じ込められているうちは、相手の笑顔なんて思い出せない」

「・・・・・そりゃ、ね。俺が悪かったんだから。
俺が馬鹿だったから、迷惑かけちゃったんでね・・・」



自嘲気味に力なく笑う男に、マスターは言葉を継いだ。

「人間関係において、100対0でどちらかが悪いなんてことは、そうそうありませんよ。特に、夫婦の間ではね」


「イヤ、でも・・・」

「特に疲れているときなんかはね、些細なことでも気に障ったりね。みんな、あるじゃないですか」


「ん・・・でも」

マスターは、珍しく男の話を遮って、言った。


「『お客さんは悪くない』とも、『奥さんにも悪いところがあったんじゃないか』とも、私は言いませんよ。
ただね、そういう巡り合わせとか、すれ違いとか、そういうのってね・・・当人同士でどうしようも無い時があるもんですよ」




「ああ・・・だから、『自分を責め続けるのは、それくらいにしたら?』ってことかしら?」


今まで隣で黙って聞いていた女性が、口を開いた。


「そうそう。そういうことです」

マスターは声をあげて笑った。

いささか強引な話の流れだったが、それが却ってありがたかった。

男は感謝を表わすようにペコリと頭を下げた。




「それにしても。別れた相手の幸せを祈れるなんて、素敵なことね」

「同感です」


あ!と女性が声を上げ、瞳を輝かせた。

「じゃあマスター、私達でこの人が奥さんの・・・
いえ、元奥さんの笑顔を思い出せるように、お祈りしましょうよ」



「え・・・い、いいよ。そんな・・・」

尻込みする男を他所に、ふたりは示し合わせたように手を合わせて 祈り始める。



「ん〜〜〜〜!思い出せますようにぃぃぃ〜!!」

顔をしかめ眉間に皺を寄せて祈る女性を横目で窺いながら、マスターは笑いを堪えている。


「いや・・・お祈りっつっても、そういうカンジじゃないんだけど・・・・」


「ん〜〜〜〜・・・ハァッ!!!」

合わせていた両手のひらを男に向け、気合いのかけ声。



「あー・・・うん。まあ、いっか。ははは・・・」

悩んでいるのが莫迦らしくなって、男は眉の横をコリコリと掻きながら笑った。

マスターも、俯いて肩を揺らしている。



男は大げさにしかつめらしい表情を作り、背筋を伸ばして頭を下げた。

「ありがとうございました。気合い、入りました」


女性が満足げに頷き、3人は同時に笑い出したのだった。






「はちじゅうに、はちじゅうさん・・・」

(結局あの翌日、ちゃんと思い出せたんだよな・・・)



玄関で、鍵を回す音がした。

「ただいまー」


明るい声に、男が答える。

「おー、おかえりー」


スーパーのビニール袋をガサガサいわせながら入って来たのは、あの女性だ。

リリーベルの最後の日、運命の出会いをした、あの女性。


「あら、お祈り中だったのね。足、持ちましょうか?」

ヤツデの鉢を足の間に挟んで重しがわりにしているのを見て、彼女が訊ねた。


「ううん。もうすぐ終わるから、大丈夫」

彼女は笑顔で頷くと、買い物袋を持ってキッチンへ入って行った。

買ったものを冷蔵庫にしまう音を聞きながら、腹筋を最後まで終わらせる。
次は、腕立て伏せだ。


男が筋トレをしている間、彼女は絶対に声を掛けてこない。

お祈りをしていることを知っているからだ。


付き合っている相手が元妻の幸せを祈ることに、抵抗は無いのか。

男は以前、そう訊ねたことがあった。


彼女は笑って言ったものだ。

「他人の不幸を願うような男より、何千倍も素敵じゃない?」



それを聞いたとき、男は何度目かになる確信を得た。

やはりあれは、予言だった。
彼女との出会いは運命だったのだ。




元妻や、転勤になった会社の同僚、学生時代の交流の途絶えた友人などの幸せを祈りながら、いつものように腕立て伏せを終える。

そして、男もキッチンへ向かう。一緒に料理を作るために。
といっても、ちょっとした手伝いぐらいしか出来ないのだが。


ふと、カウンターの上に目を留めた。

「あれ。君も買ったの?貸してあげる約束したから、急いで読んだのに」


彼女はにんじんの皮を剥く手を止めて、振り返った。

「うん。あのね、私も自分で持っていたかったの。発売日当日に、自分で買いたかったの。
だって、私たちが出会うきっかけになった人の本だもの」

「そっか・・・・」



あの日、興味津々の彼女に、マスターと代わる代わる緑川ゆりの話をして聞かせたのだった。

緑川ゆりの紡ぐ物語。
それは彼にとって、まるで予言のように働いたこと。
その祈りが、彼の再生を助けてくれたこと。


緑川ゆりがいなければ。

その物語が無ければ。


彼の性格から言って、いま包丁を持って彼のキッチンに立っているこの女性と、名刺交換などしなかっただろう。

そして、「じゃあ、今度お食事でも行きますか。牛丼屋に」と冗談半分に誘うことなど、到底出来なかっただろう。

もちろん、それに
「行きます!私、牛丼屋さん、行ったこと無いんです!!」
と、興奮も露に同意してもらえることなど、無かったはずだ。

(因にこの時の会話は、今ではふたりのお気に入りのエピソードになっている)


その後も付き合いは続き、今では毎週末、互いの家に泊まるようになっていた。


不思議なもので、仕事も上手く進むようになり、最近ではヘッドハンティングの話すらチラホラ出始めている。

だがそれには、男は慎重になっていた。
もし転職となれば、ふたりの将来にとって重大なことだからだ。



「読むの急がせちゃって、ごめんなさいね」

彼女の言葉に、手に取った本を置いた。

「イヤ、俺が勝手に急いだだけだし。それに、ブログであらかた読んでたからね」


「もうコメントは送ったの?」

「いや、まだだよ・・・『牛丼屋のお嬢様と結婚することになった』って書いたら、驚くだろうなあ」


彼女は吹き出した。

「牛丼屋のお嬢様、じゃ・・・端折りすぎで色々意味が違っちゃって、わからないんじゃない?」

男は、笑いながら首を振る。

「いや、きっとわかるさ。『水曜4時・C2の客より』って書くからね」





『緑川ゆり』の名前をインターネットの中で見つけたのは、あの翌年の冬だった。


彼女が手紙に自分の名前を残したことが、男はずっと気にかかっていた。
どこかでまたその名前に出逢うのではないかと期待して、度々検索していたのだ。



やっと見つけた彼女は、自身のブログで小説を発表していた。

連載は始まったばかりで、その後の更新は不定期だった。
が、そこには。
読む者の心の奥をほのかに照らすような、優しい物語ばかりが綴られた。

男はそれを熱心に読み続けた。


彼女のブログは、コメントやメッセージを一切受け付けない設定だったため、こちらから連絡を取ることは出来なかった。
だがこの度、その小説が書籍化されたことで、レビューを書き込むことが可能になったのだ。

彼女のブログに直接書き込めるわけではないのだが、彼女はきっと、彼からのメッセージを目にするだろう。


「あなたのお祈りは、確かに通じました。俺は今、とても幸せです」

そのメッセージを読んで、彼女はあの日のように「うふふ」と笑ってくれるだろうか。





キッチンで一緒に料理をする、幸せそうなふたり。

カウンターを挟んだその側には、青々としたヤツデの鉢。

ヤツデの葉は、すずらんのステンドグラスが描かれた本の表紙に、うっすらと影を落としている。




その本のタイトルは・・・・・







『水曜のリリーベル』







ー 完 ー







ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ





追記
posted by 霧野 あみ at 18:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 水曜のリリーベル

ー 第五週 グレンフィディック 18年 ー

席を外しているらしき先客がインテリアを扱う仕事と聞いて、最初の物語を思い出し驚いたその矢先。
店に戻って来たその先客は、美しい女性だった。

男は、運命を感じた。イヤ、感じずにはいられなかったのだ。

(また、予言が・・・)



思わず正面から女性を凝視してしまっていた男は、ハッと気がついて慌てて立ち上がった。

「いや、なんでもないんです!すみません!すみません・・・」

オロオロとしどろもどろに謝る男をみかねたのか、マスターが助け舟を出してくれた。


「先方とは、連絡がつきましたか?」

マスターの言葉に、女性の金縛りが解けた。


「え、ええ。おかげさまで。アポイントが取れました」

「それは良かった。では、少し早いけれど閉店してしまって・・・」

高価そうな酒のボトルを掲げて、微笑んでみせる。

「もしよろしければ、祝杯などいかがです?」





閉店後の、喫茶リリーベル。

テーブル席の照明は全て落とし、カウンターの天井のダウンライトだけが灯りの全てだ。

マスターがいつも仕事の後に1杯楽しむという、秘蔵のシングルモルトを振る舞ってくれていた。



最初の一杯は、彼女の仕事のお祝い。

この店のステンドグラスを作った工房と、無事連絡が取れたのだ。


「この店は、予定通り畳むんですがね・・・やっぱり私はこの仕事が好きでね。
実家のある長野で、また小さな喫茶店を開こうと思い直しまして。ステンドグラスをお譲りするのを、お断りしたんですよ」


女性は首を振って笑った。

「奥様との思い出の品ですもの。そんな大切なもの、さすがに頂けませんし」


「なるほど。それで、替わりにステンドグラスの工房を紹介した、と?」

「ええ。転居していたらしくて、随分調べて下さって・・・本当に、ありがとうございました」

女性はグラスを置いてマスターに向き直り、深々と頭を下げた。


「いえいえ。あのステンドグラスを絶賛していただきましたからね。
あれは、妻が描いた絵を元に、デザインしてもらったものなんです。素晴らしい工房ですよ」

マスターが眼を細めてステンドグラスを見遣る。

ふたりもつられるように、首を巡らせた。


「ええ。一目見て、オリジナルだとわかりました。
なかなか見かけない、斬新かつ繊細なデザインですもの」

女性も深く頷きながら窓を眺めた。



中央に大きなすずらんが一株。
葉の部分は濃い緑と薄い緑で筋状に描かれ、そこから細い茎が伸びる。
僅かに垂れ下がった茎の先端には 可憐な白い花が数輪、鈴の様に連なっている。

花の周りの大きな面積は幾何学的に区切られており、透明な黄色と より薄い黄色で彩られている。
ここを透過した光は、温かいはちみつ色に染められる。

端の方へ行くにつれ、そのモザイクは小さく複雑になってゆき、水色や淡いピンク色、不透明な白や紺色など、様々な色がランダムに配されている。



しんみりと窓を見つめながら、ふくよかな香りの酒を嗜んでいると、男はふと思い出した。

「そういえば、今月末は奥様の誕生日だって・・・」

「あら。そうなんですか?」
女性も振り返って、マスターに視線を戻す。


「やあ、憶えてて下さったんですか。嬉しいなあ」

マスターはニコニコと、酒を注ぎ足してくれた。
女性のグラスにも、もちろん自分のグラスにも。


男はグラスを掲げた。

「じゃあこれは、奥様のお誕生日に」

「乾杯」


マスターも、目線の高さまでグラスを掲げる。

「生前よく、妻とも仕事終わりにこんな風に乾杯したもんです。
・・・こんな風に祝ってもらえるなんてね。この店の最後の、良い思い出になりましたよ」


女性は掲げたグラスを口に運ぶと、再びグラスを上げて透かし見た。
天井の照明を受けて、液体の織りなすマーブル模様を眺めている。

「私、ウイスキーってあまり飲んだことが無かったけど……このお酒、とても美味しい。飲みやすくて」


「そうでしょう?グレンフィディックの18年。希少なお酒です。
口当たりがいいのでね、いつもは1杯だけと決めてるんですよ」

そう言って、マスターは笑った。

「ほら。飲み過ぎても、止めてくれる人が居なくなっちゃったから」


少し気まずくなって、男は思わず女性と目を見交わした。

そしてふたりとも、僅かに俯いて曖昧に微笑んだ。




「あのステンドグラスは・・・」

若干重くなった空気を変えるように、男が口を開いた。

女性は少しホッとした表情を見せた。


「長野での、新しいお店に?」

「ええ、そうです。そのつもりです。外すのも運ぶのも、費用が嵩みますがね。
やはり、愛着がありまして」


「じゃあ、向こうでも・・・きっと、色んなものを結びつけることになるんだろうなあ」

男は頬杖をつきながら またステンドグラスを眺め、ため息をついた。


「かもしれませんね」

マスターはニッと笑って、若干冷やかすような口調になった。

「そして、あのステンドグラスのここでの最後の仕事は、おふたりを引き合わせたことでしょうね」


男は思わず、咽せて咳き込んだ。


「そういえば、さっきはほんとにビックリしました。
電話を終えてお店に戻ったら、いきなりすごい勢いで睨みつけられたんですもの」

言葉とは裏腹に、その女性の声は笑いを含んでいる。


「イヤ、すみません。本っっ当にごめんなさい」

男は軽く咳払いをすると、グラスを置いて深く頭を下げた。
が、こちらも若干、笑いが混じっていた。

「予言が当たったのかと思ってね、思わず・・・・」


「予言?」

女性が驚いて聞き返す。興味を引かれたようだ。


「イヤ、話せば長くなるんだけど・・・つい最近まで、ここで働いていた女性がいましてね。ね?マスター」


マスターは、わざと秘密めかして声を落とす。

「そうそう、これがとても面白い子でしてね・・・・」








ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 霧野 あみ at 13:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 水曜のリリーベル

2012年03月02日

ー 第五週 金曜のリリーベル ー

「やあ、よく来て下さいました」

男が来店すると、マスターが笑顔で出迎えてくれた。


「彼女は、やっぱり・・・」

「ええ。来ませんでしたね。実は私も期待していたのですが」


「そうですか・・・」

男は少し落胆しながら、いつもの席に座った。


「翻訳の仕事が忙しくなると言ってましたからね。
なんでも少し前から、ベトナムから移住してくる家族の通訳や引っ越し準備を手伝っていて、近くその家族が来日するんだとか」

「へえ。そりゃ、大変だ。忙しいわけですね」

「ええ。でも、とても良い方達らしくて、仕事が楽しそうでしたよ。彼らとの出会いが、自分の大きな転機になったとまで言ってましたから」

マスターは既に、いつものコーヒーを淹れ始めている。
心安らぐ香りが立ちのぼる。



「この店は?彼女の転機じゃなかったのかな」

そう疑問を発した男に、マスターはごく控えめに笑ってみせた。
が、その謙虚であろうとする微笑みは、内心の誇らしさを隠し切れていなかった。

「実は・・・『この店とマスターと、彼らとの出会い』って、言ってくれました」


「うん。そのとおりだと思いますよ」

男は大きく頷くと、振り返って感慨深げに店内を見回した。


「この店とも、今日でお別れなんですね」




金曜の20時過ぎに見る店は、当然ながらいつもと全く違って見える。

普段、男が仕事でこの辺りに来るのは水曜だけだっだ。
だが、今日は営業最終日ということで、仕事を終えてから駆けつけたのだった。


「あれ・・・」

今日は、珍しく先客がいたようだ。

窓際の席に、コーヒーカップがひとつ残されている。
イスの背もたれには、ジャケットがかけてある。


「どうかなさいましたか?」

「あ、いえ。この店で、俺以外に客が居たのって、初めて見たから・・・あ!イヤ、スミマセン!」


自らの失言に慌てふためく男に、マスターは可笑しそうに笑った。

「彼女も言ってましたよ。水曜4時は、何故か貸し切り状態になるんだって。きっと、それもご縁だったんでしょうね」


そう言いながら、男の前にコーヒーを置く。

「どうぞ。これは不思議なご縁のお客様への、私からのお礼です」


男は丁寧に礼を言ってコーヒーを引き寄せながら、ふとカウンターの隅にある名刺に目を留めた。


「ああ、これですか。そこのお客様の名刺ですよ。うちのステンドグラスを譲って欲しいとのことでね」

窓際の席を指す。
すずらんのステンドグラスの真下の席、空のコーヒーカップ。

「なんでも、グラスアートとかインテリアとか?そんなものを扱っている方らしくて」


「えっ?!」

男は驚いてマスターを見上げた。


彼女の最初の物語・・・・

(「あ、ちょっと待って下さい。彼女…お嬢様は、インテリアとか美術工芸品を扱う仕事を始めようとしてる人」)



そのとき。

さっと風が吹き込み、カランコロンと音をたてた。

男が初めて、店の中で耳にするカウベルの音だった。


思わずドアの方を振り返る。
ドクン、と心臓が大きく打った。



「え?・・・な、なにか?」


ドアを開けて入って来たのは。

初対面の男から向けられた視線の余りの勢いに戸惑って立ちすくむ、美しい女性だった。





ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 霧野 あみ at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 水曜のリリーベル

2012年02月29日

ー 第五週 彼女の物語 ー

「ものがたり?さて、私には何の事か・・・」


男は説明した。

自分のために、彼女が物語を作って祈ってくれていたこと。
それは不思議と、心の底で彼がおそらく必要としていた言葉であり、結果として彼に影響を及ぼしたこと。

「俺、まるで予言を聞いているような気がしてたんです」



「・・・そうでしたか。でも、私の知る限り、他の方々とは普通の会話をしていたように思います。他の時間帯、店は結構混んでいましたから」


そうだった。

「なんか、まるで・・・俺のための店みたいだ。少なくとも、この時間だけは」

以前、そんなことを言ったのだった。


俺のための店。

俺のための物語・・・・




それは、真っ暗な道をトボトボ歩いているときに現れた、小さな灯のようだった。

最初はとても、ちいさな灯。
足元をようやく照らすような。

だが、物語が重なるにつれ、その灯は少しずつ、大きく明るくなっていった。



そして、先週の物語。

店員は言った。

「これからは、自らの頭で物語を紡ぎ、自らの言葉で明日の希望を語り、自らの手で未来を拓くのだ」

「諦めたら、そこで試合終了だよ」


俺は、手渡されたのだ。

彼女によって灯された灯。
自分の未来を照らす灯を、自らの手に。




「彼女は、とても繊細で敏感な人です。敏感すぎるくらいに」

マスターの声で、男は物思いから引き戻された。


「相手の表情や雰囲気、話し方などから、様々なことを瞬時に受け取ってしまう。
必要以上に察してしまうこともあったのでしょう。初めてここへ来たときは、ひどい状態でした」

「え・・・」


ひどい状態?・・・いつも穏やかに笑っていた、彼女が?


「愚痴めいたことは何も言わず、いつも笑顔でしたけどね。わかりますよ。客商売を長くやってますからね」

マスターは、軽いため息をついた。

「本当にあの頃は、痛々しかったですよ。溺れる寸前で、細い小枝にかろうじてしがみついて震えているみたいな・・・おかしな表現ですが、そんな印象でした。
それなのに、ニコニコ笑ってみせるんですから」


「そんな・・・・一体、何があったんだろう」


マスターは かぶりを振った。

「わかりません。ただ、『家に籠ってひとりで仕事をしてると、息が詰まる』とは言ってましたね」

「家で、仕事・・・。彼女は、何を?」


「翻訳の仕事をしていたそうです。大きな事務所から委託される形で、細々と。たしか、ベトナム語とか」

「へえ・・・すごいですね」


「ただおそらく、仕事が問題ではなかったでしょう。それ以外で何か抱えていたようでしたね。あくまでも、私の受けた印象ですが」

男は、彼女が「胃を壊したことがある」と言っていたのを思い出した。
もしかしたら、コーヒーを飲み過ぎたせいばかりではないのかもしれない・・・・



「お客さん、『リリーベル』って何の花だかご存知ですか?」

「え?イヤ・・・」

突然話が変わり面食らって口籠った男に、マスターは窓を指差す。

すずらんの意匠のステンドグラス。


「すずらんです。彼女、このすずらんを見つけて、この店に入ったそうなんです。この話は、最後の最後・・・彼女が辞める直前に聞いたんですがね・・・」





彼女は長い間、暗闇の中でしゃがみこんでいた。淀んだ空気の中で喘いでいた。
出来るだけ感情を押し殺し、一日が過ぎてゆくのを息を潜めてじっと待つ。そんな毎日だった。
誰かに相談することも出来ず、眠る前にただひとつ祈っていたのは・・・
「明日の朝が来ても、ずっと目が覚めませんように」



彼女はある日、園芸店ですずらんを買った。

「どうしても耐えられなくなったら、この根を齧って死んでしまえばいい」

可愛らしく可憐な花を咲かせる、すずらん。
その根には猛毒が含まれているのだ。

死ぬために買った花なのに皮肉な話だが、それだけが彼女の生きる希望だった。


初めの年、それは可憐な花で目を愉しませてくれた。
花が枯れてからも、2〜3日おきに水をやり、園芸店で教えられたとおりに世話をした。

次の年、春先に律儀に芽吹き、花は少し小さくなったものの、またちゃんと咲いてくれた。


だが、その次の年。
春を過ぎても、芽すら出なかった。
鉢植えを掘り返してみると、球根は跡形も無く消えていた。
まるで、初めからそこには何も無かったかの様に。

彼女は呆然とした。唯一の心の支えを失ってしまったのだ。

途方にくれながら、ただただ何時間も歩き回った。
新しいすずらんを買うことは考えなかった。

彼女の最後の心の砦は、”あの”「すずらん」だったのだ・・・・






「そんな時にね、偶然うちを見つけて、フラッと入ったらしいんです。で、翌日からバイトに来てもらうことになって」

「そんなことが・・・今の彼女からは、想像もつきませんね」

思わずため息をつき、男はすっかりぬるくなってしまったコーヒーを飲み干した。

マスターは、保温していたフラスコからコーヒーを注ぎ足してくれた。


「それを話してくれた時もね、いつものあの調子で『すずらんの根を噛んで死ぬなんて、神話の中のお姫さまみたいじゃありません?』なんて、笑ってましたけどねえ」

「そんな話をする時でも、やっぱりふざけてるのか。・・・やれやれ、全く」


「人に心配をかけたくない、って性分なんでしょうかねえ。そのくせ、自分は人の心配ばっかりしてね」

マスターは、楽しそうに笑った。

「でもそれが、彼女の助けになったみたいです。たくさんの人と話して、お客さんの笑顔を見るのが。彼女には、自然と人の心を和ませるような、天性のものがありましたよ」



男は深く頷いた。

ほんとうに、そのとおりだ。








ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 霧野 あみ at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 水曜のリリーベル

ー 第五週 手紙 ー


「それから・・・・」

男が感慨深くコーヒーを啜っていると、マスターはカウンター越しに封筒を差し出してきた。


「彼女から預かっていたものです。お客様に渡して欲しい、と」

「え・・・なんだろう?」

不思議に思いながらも封筒を受け取る。


『水曜4時・C2のお客様へ』


隅に花の模様が浮かび上がっているシンプルな白い封筒には、それだけが書かれていた。

糊付けされていない封筒を開き、手紙を取り出す。

同様にシンプルな白の便箋。
右下にはやはり、花の模様が浮き出している。

開くとそこには、達筆とは言わないが、読みやすい綺麗な文字が並んでいた。



拝啓

水曜4時・C2のお客様。

お名前を存じ上げないので、このように呼ばせていただきますこと。
また、きちんとご挨拶もせぬまま、店を辞めてしまったこと、どうぞお許し下さい。

実は、辞める事はだいぶ前から決まっていたのですが、私はお別れが苦手なのです。本当に、苦手なのです。
同じ理由で、この店が閉店する事も申し上げられませんでした。


コーヒーもお話も、楽しみにして下さっていたのに、とても残念です。

私の淹れるコーヒーを、拙い空想を、楽しみにして下さる方がいること。

それは私にとって、とても励みになりました。大きな喜びでした。


本来なら、きちんとお礼を申し上げたかったのですが。
また、そうするべきなのでしょうが。

せめてこのような形で、お礼を言わせて下さい。


コーヒー、気に入って下さってありがとうございました。

お話を聞いて笑って下さって、ありがとうございました。
お客様が笑って下さる度、私も楽しい気持ちになれました。


これからも、あなたとあなたの周りの方々に、笑顔が溢れますように。

そして、あなたのお祈りが、ちゃんと相手の方に届きますように。


お節介は承知しておりますが、心よりお祈り致します。


どうぞ、お元気で。
特に、胃腸と腹筋と上腕二頭筋の健康には、くれぐれもご留意を。


かしこ

緑川 ゆり




最後の一文で、男は思わず吹き出した。

手紙を畳み封筒へと戻しながら、苦笑いする。

(まったく・・・この人は、最後にふざけなきゃ気が済まないんだろうか)



「楽しい手紙でしたか」

マスターが、洗い物をしながらニコニコしている。


「・・・ええ。とても」

男はクスクス笑いながら、手紙を内ポケットにしまった。

「つくづく、変な人だ」


「ハハハ。そうですね。確かに、少し変わった子です。でも・・・」

濡れた手を拭きながらマスターは、親戚の子供か自分の教え子を自慢するような表情で笑う。


「相手がどんな言葉を欲しがっているか、相手にとって本当に必要なのはどんな言葉か。そういった事を、全て知っているような。
そんな、不思議な子だ」



マスターの言葉が、胸を衝いた。

確かに、そのとおりだった。



最初にこの店に来たとき、男は自分の人生に対する興味を失っていた。

彼女は、明日を迎えるのが楽しみになるような物語をくれた。


次の週、「全てを捨て去ってしまいたい」と、それまで密かに思っていたことをズバリと言い当てられた。
男は心の奥を見透かされた気がして、内心ヒヤリとしたものだった。

そして彼女は、生命の繋がりや、自分を労る事の意味を教える物語をくれた。


その次の週。未来への希望を持てずにいた自分に・・・

今ある人生は、全て自分で選び取ってきた結果であるということ。
全ての物事は繋がっていることを分らせてくれた。

そしておそらく、「散らばった数々の偶然は、自分の力で繋ぎ合わせる事が出来る」ということ。

彼女は、バラバラの物語をひとつに縒り合わせる事で、それを伝えたかったのかもしれない。



今までの物語を初めから思い返していた男に、マスターは問いかけた。

「お客様も、何か言われましたか」


「も?」

マスターの言葉に引っかかり、男は顔を上げた。

「彼女、他の客にも、物語を?」








ランキングに参加しています。
↓をクリックすると、投票出来ます。よろしくお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ



posted by 霧野 あみ at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 水曜のリリーベル